研修講座のご案内
令和6年度 第36回 夏季研修講座のまとめ
2024年09月11日(水)更新
一人一人の子どもを主語にした授業づくり
はじめに
時下、胆振管内教職員の皆様方には益々のご健勝のこととお喜び申し上げます。また、平素より胆振教育研究所の研究にあたり、多くのご理解とご協力をいただきありがとうございます。
本教育研究所では、教職員の研修への寄与と、資質向上を目的に研修講座を開催してきました。今回は「一人一人の子どもを主語にした授業づくり」というテーマのもと、「複線型の授業実践から感じられる子供たちの変容」という内容で講座を開催いたしました。登別市立富岸小学校教諭 宇南山 大輔 氏に講師をお願いし、ハイブリッド形式(会場とZoom配信)で講演を行いました。以下は、講座の内容をまとめたものです。多くの先生方にご活用いただけると幸いです。
研修講座の様子
会場・Zoomを合わせて80名を超える先生方に参加いただき、開催することができました。2時間ほどの講座でしたが、参加された先生方も、本教育研究所所員にとっても興味関心が高い内容となりました。今回は、下記の3つの内容を中心に講義していただきました。
どうして複線型で授業を行うのか
自ら課題を発見し解決手法を模索する、探究的な活動を通じて身につく能力・資質が重要です。その上で、子供一人一人の願いや思いを中心に、子供自身がどう学ぶかを選択し続ける授業が求められています。当然のことながら、授業の中で子供一人一人の満足するポイント、交流したい・まとめたいタイミング、使いたいツールさえも異なります。それらを満たす授業として複線型の授業があります。
どのような授業なのかがイメージしにくい方々にもわかりやすいように、実際の授業の風景を撮影した動画を見せながら説明をしていただきました。また、参加者たちにアイスブレイクを行う中で、複線型の授業の一端を体験させていただきました。
授業改革が盛んに話題に取り上げられています。これからの授業づくりの一つとして複線型があることを実際のイメージとして学ぶことができました。
子供たちの変容
子供たちが大きく変容したところを中心に紹介していただきました。
学力に課題を感じていた子供も、自己効力感の高まりや集中力の向上が見られたようです。「自分ならできるかも!」という気持ちが増えたと子供たちが実感できていることは、この実践の大きな成果ではないでしょうか。
また、子供たちが「自分たちで」が当たり前になった結果、教室環境づくりも自分たちで行うようになってきたということです。自分たちの生活の中にも課題を見つけ、課題解決のためにはどのようにしていかなければいけないのかを仲間と交流しながら進められている点などは、授業での学びが子供たちの資質能力の育成につながった一つの例といえるのではないでしょうか。
授業のデザイン方法
授業の基盤となる学級づくりで意識していることからお話しいただきました。特に協働的な学びを成立させるための心理的安全性の保障、これからの社会で生きる力を育むための子供に任せ、学びを自走させていくような働きかけの2つについて取り上げられました。
学びを自走させるために、子供たちに探究的な学びの価値やプロセス、協働学習の目的やその流れを理解させる働きかけを行っていました。まずは授業の下地作りが大切であることを強く感じました。
授業づくりにおいては、各教科における見方・考え方をおさえ、子供たちが単元のゴールイメージをもてるような取組がなされていました。はじめから、授業内容の全てを子供たちにゆだねていくことは難しいため、手本となる学び方を見て知る段階から、徐々に自分の力で学習を計画・遂行できるように段階的に進めてきたようです。ただし、子供たち一人一人に対する教師の支援の割合が変わってくるので、より子供たち一人一人を見取る児童理解が大切になるということでした。
このような授業を展開するために、教師に求められることは何なのでしょう。今一度考えてみることが、これからの授業づくりにいきてくるのではないでしょうか。
参加者の声
おわりに
児童生徒に資質・能力を育むための一つの手段として、今回ご講話いただいた複線型の授業があります。一斉授業の否定ではなく、それをベースに児童生徒にゆだねる場面を増やし、児童生徒が主体的に学習を進めていくことが必要です。その土台となるものはやはり学級経営であり、学級の心理的安全性を保障することが私たちの大切な役割の一つです。そのためにも、児童生徒の様々な角度からの見取りが今まで以上に必要でしょう。授業改革が求められる今だからこそ、各先生方が多くのチャレンジをしていくことが、胆振全体のより良い授業づくりにつながっていくものと考えています。
本講座で学んだことが、今後の皆様のご指導等に活用されていくことを願っております。講師をしてくださった宇南山先生、そして受講してくださった皆様に心から感謝申し上げます。
学習指導と生徒指導を両輪で考えることで、子どもを主語にした学びが展開できることを改めて学びました。